前回紹介したQドラムはシンプルな発想で課題を解決するという点で世界から賞賛されましたが、コストが高いため、本当に必要としている貧困層には普及していませんでした。
そこで、今回は普及にも成功しているキックスタートのプロジェクトをご紹介します。
http://www.kickstart.org/products/super-moneymaker/
Super MoneyMaker Pump スーパーマネーメーカーポンプ
この商品は、人力足踏みポンプで、水を深さ7メートルの井戸、川、池などから汲み上げて、さらにポンプから7メートルの高さまであげ、合計、水源から14メートルの高さのところまであげ、必要な場所に水を散布することができます。
ポンプを動かすのに、燃料や電気は一切使用しません。
1日に2エーカーの土地を灌漑可能です。
実際にどのくらいの効果があったのか。
キックスタートの影響測定調査では、3万5000世帯が乾期に果物・野菜の灌漑にポンプを使用し、利益の上がる小自営農業を始めたと見積もられているようです。
また、収穫の大幅増と付加価値の高い作物の1年を通じた栽培により、農業の順収入を年110ドル〜1,100ドルに増やし、自力で貧困から脱出したそうです。
デザインの力が人々の生活を変えた好例といえそうです。
キックスタート曰く。
貧困層に必要なのは節約のための道具より、お金を生み出す道具。
日々の生活が切迫している人たちにとっては、すぐに結果がでるプロジェクトでなくてはならないようです。
慈善事業には限界があり、そのプロジェクト自体がビジネスとして成り立つものとしてプロダクトだけではなく、プロジェクト自体、ビジネスモデルの組み立てからデザイン思考ですすめていく必要がありそうです。
最後にキックスタートの9つのデザイン原則を紹介して終わりたいと思います。
〈 キックスタートのデザイン原則 〉
1.収入を生む
どのツールにも利益を出せるビジネスがついてること
2.投資の見返り
多くの人にビジネスチャンスがあること。ビジネスは、起業家が6ヶ月以内に元を取れるよう十分な利益をだせること。
3.価格の手頃感
数百ドル以下、理想的には100ドル以下で小売でっきるようにツールをデザインする。
4.エネルギー効率
みんな人力で動く。人力から機械の動力への変換がきわめて効率的であること。
5.人間工学と安全性
長期間、けがの危険がなく使えること。
6.設置・使用の簡便さ
追加のツールや研修を必要とせず、設置と使用が簡単であること。
7.強度と耐久性
厳しい条件下で限界まで使用されるので、酷使に耐える作りであること。すべての製品に一年間の保証をつけている。
8.生産能力に見合うデザイン
大量生産でコストを引き下げ、地元で手に入る原料と工程に応じてデザインを決定する。
9.地元文化の受け入れ
新技術を採り入れるために地元文化が変わることはない。技術を地元の習慣に合わせること。
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